まだ幼稚園にも行っていなかった頃、祖父はよく私を連れて知人の荒川さんの家に遊びに行った。そこは手広くやっている自転車屋だった。茶の間に上がると、独特のつーんという臭いが漂った。
荒川さんのひざの上には、まるまると太った虎模様の猫がいて、訪ねてきた私たちの方を片目だけ開けてちらりと見て、のっそりとどこかに行ってしまう。どうして変な臭いがしてるの?と尋ねると「猫のしょんべんの臭いだよ」と荒川さんは教えてくれた。
しょんべんくさい生き物はいやだなあと、その時は思った。
それから10年くらい経つと我が家では迷い込んできた犬を飼うことになった。犬はやっと目が開いたくらいで、ちっちゃくてとても可愛らしかった。チビ、と仮に呼んでいるうちに犬はどんどん大きくなり、体長は1.5mを超えた。結局チビという名前で一生を過ごした。
犬が我が家に来てからは、それまでたまに庭先をうろちょろしていた猫たちが来なくなった。
この頃は近所で猫を見かけると、頭をなでたりしている。なんとなく気が休まるのだった。生まれ立ての野良猫が、植え込みの影にいてみいみい鳴いていることがある。家に連れて帰ろうと思うけれども、集合住宅だし面倒を見てやれない。
先日、福岡の既知外が子猫を残虐な方法で殺し、その様子をネットで公開した。
こんなかわいらしい生き物をじわじわ殺したのである。その精神の荒廃ぶりに慄然とするばかりである。
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