柿の種は危険である

 お菓子の類いは、努めて食わないようにしているのだが、努力も空しく、最近は柿の種にはまっているのである。次から次へと手が伸びてしまい、気がつくとでかい袋がからっぽになっている、なんてことはしばしばである。なんでこんな古臭いつまみにはまるのだろうか今どきスナックだってこんなつまみ出しゃあしねえぞとつぶやきながら口に放り込むのである。

 考えてみれば、私は柿の種というものが長らく嫌いだった。
 餓鬼の時分、友だちと家の近所の公園に遊びに行った時のことだ。時は4月の末頃、桜が咲く季節だ。公園は桜の名所でもあったので、花見の客がたくさんいた。酔客の間を縫って遊んでいると、手招きをするおじさんがいた。だいぶ酒を飲んでいるらしく、顔は真っ赤である。
 せっかくだから、なんか食え、小僧っ子ども。
 紙の皿に盛られたつまみを差し出してくる。サキイカだのサラミだのに混じって柿の種があった。それに手を伸ばして口に放り込んだ。
 うえっと思わず吐き出した。
 紙の皿の上には酒やビールやジュースがこぼれていたのである。そのせいでふやけた柿の種。酒の苦味、柿の種のしょっぱさにジュースの甘さ。
 走って逃げると、後ろからどっと笑い声が聞こえた。

 それから10数年、柿の種には手が伸びなかった。柿の種というものは、お酒を飲むオトナが食うものと思っていたのである。

 柿の種を食べられるようにはなった。
 でも食べ過ぎはいけないよね。
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