行列に並んでみた。

 先日、秋葉原の中央通り沿いを歩いていると、異様な行列の一団を発見したのである。
 からだは大きいのになんだか存在感がない男、若いと思われるものの年齢が明らかではない額の後退した体積の大きなネクタイを締めた男、妙に油じみていて100メートル歩いただけで息が切れそうな感じの首と肩の境界が曖昧になっているくらい肉を背負っている男、呼吸音の大きな男、骨と皮ばかりになっている男。
 でぶか餓死寸前のように見える激やせ男のどちらかで、髪が天然の油で固めた感じかはげのどちらかという一団である。
 で、その行列の一団は一帯の明るさを減じ、周囲に暗い何かを放っていたのであった。
 この人々がなぜ並んでいるかを知りたくなって、最後尾に並んでみることにした。並んでいる人の大半はおし黙ったままであるが、何人かが奇妙にかん高い声で交わす内容からすると、どうやら<エロゲー>の新作を買うために並ぶ行列であるらしかった。ここはゲーム店の店頭であり、その店で買うと特別なおまけをくれるらしい。それ目当てで並んでいるということのようだ。
 列の前にいる人々が放つ何らかの波動が、私の体力をじわじわと奪うような気がした。それは暗い情念のエネルギーである・・・
 道を往来する人の視線がなんだか痛い。一瞬、列に向けてくる表情に嫌悪と哀れみと揶揄と嘲笑が入り交じっているのである。男連れで歩いているとっても可愛い女の子は小さな、しかし良く聞こえる声でこう言ったのである。

 「気持ち悪い」

 私は耐え切れなくなって列を離れて駅に向かった。振り返ると、その黒い一団はお互いに目を合わせるでもなく曖昧な笑みを浮かべて発売の時を待つのみである。
 やはり、そこだけ明るさが減じている。
 
 何ごとも興味半分で首を突っ込んでしまうというのは、果たしていいのか悪いのか?
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