桜散る
 毎年思うことなんだけど、桜が散った後はちょっとだけ淋しくなる。
 はらはらと風に舞って地面を覆うように散った花びらは、じき汚れていく・・
 餓鬼の時分、近所に花見できる場所があった。私の家は山の中腹にあり、山のてっぺんには公園があった。公園がいわゆる桜の名所なのだ。桜の季節になると、家の前の道をゴザと酒と食い物をたくさん抱えた人たちが上っていき、夜遅く、その人たちは酔って歌い騒ぎつつ下っていった。嬌声は私の安眠をさまたげ、不安をかすかにかき立てた。
 翌朝、散歩がてら公園に行ってみる。なぜ散歩に行くかというと、まれに酔客がお金を落としたりしているのだ。それを何度か拾ってくすねたことに味をしめて、毎年行くようになったのだ。
 ゴミがあちこちに散乱しており、食べ物と酒の饐えた臭いが漂っている。時折、吐瀉物もあって、刺激臭を漂わせていたりもした。
 不思議なことに、桜の美しさの記憶は曖昧なのに、花見の宴のあとの臭気のことは鮮明に覚えている。

 私の桜の思い出と言うのは、だから、ゴミと吐瀉物の臭気なのである。
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