靖国神社に逝ってよし!
先日、靖国神社の前を通った。

 「8月15日って何があった日ですか?」「12月8日はジョン・レノンの命日ですが、その他に歴史上の重大な事件が起きました。それは何ですか?」という問いに答えられず、日本が前世紀の前半にはアジアのあちこちで戦争をしていたことも、戦争の相手がどこだったかも知らない。
 台湾や朝鮮半島がかつて日本に併合されていたことも知らないという若者が6割を占めるこの国では、戦後、正しい意味での歴史教育などしてこなかった。
 その理由は、左右のイデオロギーの影響などではなく、単純に授業に割り当てる時間が不足しているということと、入学試験においては、世界史・日本史では近代史・現代史の問題はほとんど出題されないから教えない。
 したがって、敗戦後の日本では、戦争の正しい知識も戦争がなぜ過ちであるのかも教えられることはほとんどなかった。
 いや、この国の権力者たちはそういった事をきちんと教えたがらなかったような気がする。「敗戦国としての歴史」を認める気がない人がかなりいたのではないか。

 不景気が長引いて閉塞感が高まると、社会は右傾化するという話を知ったときは、ぴんと来なかった。
 しかし小林よしのりの史実無視事実改竄戦前体制翼賛漫画が(いかに組織的購買とはいえど)ヒットし、石原慎太郎の吐きまくる暴言・妄言が大した問題にはされることはなく、あげく「新しい歴史教科書」の検定通過、一部の学校での採択である。
 ああ、右傾化してきた、と昨年あたりからはっきりわかった。
 この国の権力層やメディアの一部で力を行使できる者のなかに右に曲った「愛国者」が増えてきたのだ。
 「東京裁判」は間違いであり、旧連合国の責任は追求されるべきであり、戦争を通じて、東南アジア各国において植民地からの解放のきっかけとなった日本軍の役割は認められるべきである。また、中国のいう「南京大虐殺」は虚構である。
 こんな理屈が国内で平然とまかり通っていて、出版物などで「商売」になっているのだ。いわゆる予言や幽霊の本、「世界はユダヤ資本によって支配されている」といった類いの陰謀史観関係の本と同じく、「日本の誇り」というものが好きで、そのような主張の本を買うという層がかなりの数に上るようだ。

 そんないやな風潮のなか、首相小泉純一郎は昨年の8月13日に靖国神社に参拝した。(政治的な信念からではなくって)票をくれる「日本遺族会」に確約した8月15日の公式参拝は断念し、いちおう中国・韓国に気を使いつつ13日で妥協した。
 信念を曲げずに8月15日に堂々と参拝したらよかった。
 そうすれば、日本は東アジアでの孤立を深め、対立すると見えて中国との関係をますます深めている合衆国にも見限られるきっかけとなっただろう。
 本当に孤立するということになれば、おもに経済的な面で打撃を蒙って、経済はクラッシュし、国の財政は破たんする。その結果、日本という国は敗戦に匹敵する窮状を呈する。そのあと、日本は再生のチャンスを得られるかもしれない。
 それこそ、首相が好む「痛みを伴う改革」を大胆に行えるだろう。

 靖国神社には何度か出かけた事があるが、参拝は一度もしていない。近親者で祀られている「英霊」がいないし、神道は信じていないし、A級戦犯を拝む気はない。軍人の死者はいるが、戦争で殺された民間人はここにはいないからだ。

 戦争で亡くなったひとを悼むのに、「かたち」は要らない。その場で、心のなかで追悼をすればよいのだ。

 この神社には戦争に関する様々な収蔵物を見ることができる。それを見に行くのだ。特攻隊員の遺書、南洋の島々で収集された遺品など、戦争の悲惨を伝える。
 
 靖国神社はいちどは行ってみる価値はある。もしかしたら、歴史を学ぼうという意欲を持つきっかけになるかもしれない。
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